0020-11-09

★学術大会の開催に寄せて

日本トランスパーソナル心理学/精神医学会代表  
安藤治(花園大学)   

 本年の日本トランスパーソナル心理学/精神医学会・学術大会は、人体科学会との共催の形で開かれる。このような非常に意義深い開催を可能にしていただいた人体科学会学術大会長の関西大学・伴義孝先生に、まず第一に深く感謝の意を表したい。  

今回の大会は、共通のメインテーマとして「生き方の問題:その原点を問う」が掲げられている。トランスパーソナル心理学/精神医学会でも、シンポジウムに「「生き方の問題」をめぐる学問の探究とスピリチュアルな実践」を企画させていただいた。

  このメインテーマは、奇しくも、故・湯浅泰雄先生と私との対談として『科学とスピリチュアリティの時代』に収録された内容に由来するもの、とのことで、個 人的にも感慨深いものがある。(お読みいただければすぐにお分かりいただけるが)対談は冒頭で、私から湯浅先生に向け、先生ご自身のスピリチュアルな実践 について思い切って尋ねることから始められた。私のなかで長年の間眠っていた疑問を、貴重な機会を借り、直接湯浅先生にぶつけてみようと思ったのである。

  湯浅先生がクンダリニ・ヨーガの実践をしておられたことは、かなり前から存じ上げていた。しかし、そのこと(実践)と先生の学問とのつながりについては、 先生もこれまで多くを語ってはこられなかったと思う。いつか機会が得られるなら一度改めてうかがってみたいとずっと思ってきた。というのも、私どもの学会 などに関わっていただいている高名な先生方のなかには、ヨーガや瞑想などの実践を古くから続けておられる先生が少なくないことを知っているからである。た が、学者である限り、個人的な(主観的)体験と(客観的)学問との混同は許されないこと。実際多くの先生方がそうなさってこられたことはよく承知している つもりである。

しかし、「この分野」に興味を抱く人間であれば、この主題は誰にとっても最大の関心事ではないだろうか。そして現代において、「この分野」に学問的に接近 しようとする場合、その理解には、個人的体験こそが重要であり、むしろそれなくしては可能にならないのではないかとも思っている。「スピリチュアリティ」 という言葉が学問的にも重要な概念になってきた今日、そんな問いに対する意見や見識を、湯浅先生ご自身から直接聞いてみたいと思ってきたのである。

 対談で先生が語っておられたように、この問いは、まさに学問以前の「生き方の問題」としなければならない。だが、現代ではそれがより多くの人々によって 求められている。学問的営為は、そのような関心にも応えられる総合的な視点を提供し、議論の質を高め、方向性を示す役割をもっているはずである。学問内部 の問題としては、「科学的学問」の方法論の根幹にまでかかわる問題がここには含まれているのであり、洗練された議論がなされることは、今後の時代には強く 求められていよう。  ともかく、「学会」という学問的議論の場で、今回のようなテーマが掲げられるのは画期的なことである。私どもの学会のシンポジウムも含め、まずはザック バランに話をすることから始められたらという気持ちでいるが、今回の学会全体の意義には非常に大きな期待を抱いている。

 文末になってしまったが、今回の大会運営は、準備委員長および学術大会長を引き受けてくださった関西大学の村川治彦先生のお力によるところ甚大である。ここに誌して改めて深く御礼を申し上げる。 

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人体科学会第18回大会の開催にあたって(ごあいさつ)

人体科学会第18 回大会
大会委員長 伴 義孝

  人体科学会第18回大会は、「社会と大学と学会の連帯を求めて」という大会スローガンのもとに、2008年11月22~23日の両日、関西大学において開 催されます。すでにご案内のとおり、本大会は、「人体科学フォーラム2008 at 関西大学」というコンセプトを掲げて、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会、並びに、身体運動文化学会関西支部との連携開催となります。また人体科 学会関西ワーキンググループや財団法人大阪府レクリエーション協会とともに共催する公開プログラム「東西いのちの文化フォーラム2008」との連帯開催と なります。さらに、連帯という意味においては、多彩なプログラムへ「0歳から100歳まで」の地域住民のみなさまの参加を得て、今回の総合テーマ「生き方 の問題:その原点を問う」について一緒に考えてもらうことを狙いとしています。

 さて、今回の総合テーマは、人体科学会の創設を先導されました湯浅泰雄先生(2005年歿)の最晩年の問題提起を継承し発展させるためにネーミングされたものです。

   ……私たちは、知識としての学問とか研究者レベルの問題に目がいきやすいのですが、現代の社会で実際に問われているのは、学問以前の人間の生き方の問題 だと思うのです。広く現代の人間の生き方に対して方向を示すような研究と実践、そういうことが求められていると思うのです。(湯浅泰雄・2005)

人体科学会は1989年に呱呱の声をあげ「東洋思想と西洋思想の融合を図る」ことを活動目的としております。その一環として、今回の大会構想では、総合テーマ「生き方の問題:その原点を問う」を前面に掲げて、すべてのプログラムを立案することになりました。

  とりわけ11月22日開催の「人体科学フォーラム」では、植物生態学の領域で世界的にご活躍の宮脇昭先生(横浜国立大学名誉教授)に特別講演「鎮守の森の 思想:日本から世界へ」を、また新進気鋭の安田登さん(下掛宝生流ワキ方)並びに槻宅聡さん(能楽森田流笛方)には特別公演「能と笛:こころ・からだ・い のち」をお願いしてあります。特別企画のお三方も、湯浅思想に賛同してくれて、大会を盛り立てていただくことになりました。大会開催当事者としましては、 こうした諸般からのご理解を得ることにおいて、本大会の所期の目的がなかば達成されているものと自負しております。ご期待ください。
ところで、今大会は、「3学会連携+関連諸団体連帯」という文字どおりの「みんなの大会」となります。そして、前出の「大会スローガン・大会コンセプト・大会総合テーマ」の具体化という、課題を抱えることになっています。

  大会企画者としましては、全プログラムのそれぞれから発信される成果がやがて「1つ」に融合するところに、開催意図のすべてが結実するものと確信しており ます。なお本大会号には、関係者からの寄稿を得まして、人体科学エッセイ「生き方の問題:その原点を問う」が収録されています。人体科学会では、これらの エッセイでの「主張」もまた第18回大会での思潮的発表であると考えております。お楽しみください。最後になりましたが、今大会の開催にあたりまして、ご 賛同、ご後援、ご協力いただきます方々へ感謝の意を表しましてご挨拶といたします。


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ご 挨 拶

身体運動文化学会関西支部
会長  谷 祝子

 第18回人体科学会が関西の地、関西大学を会場に開催されますことを心より感謝するとともに皆様のご参加を歓迎いたします。

この度は、身体運動文化学会関西支部にとり、共催という形での学会開催となりましたことは、他学会の会員の皆様との相互交流の良い機会と大いに期待しております。

 連帯開催の意義をかみ締め会員一同一丸となって協力し、学び合いたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 大会の総合テーマは「生き方の問題:その原点を問う」で、学会のあり方を問い直そうとする意図を持っての開催と承っております。

  地球規模での環境問題や無責任極まりない殺人・傷害事件、自殺問題等々「生き方の問題」を語ることは、最近の社会情勢を考える上において必要、且つ大切な ことだと思います。しかし反面「生き方」について討議の必要性が問われる難しい時代になったと考えさせられることばかりです。

 身体運動 文化学会関西支部会は、1999年に身体運動文化学会の傘下として関西に設立されました。スポーツや武道、舞踊、芸能などの身体活動は、私たち人間がより よく生きていくうえにおいて欠かすことのできない精神的、身体的よりどころであり、古代より私たちの生活に密着して発展してきたものです。

  本会は、前期は講演会と研究発表会を開催、後期は講師を招いて実技研修会を実施、それに加え、学術刊行物「身体運動文化論攷」の発行することが年間の主な 事業となっております。会員の研究発表の場として、また若手研究者の育成の場としても、今後さらに精進を続ける所存でございます。今後ともご支援をよろし くお願い申し上げます。

 今夏は猛暑の中、北京オリンピックが開催されました。史上最多の国と選手の祭典に世界中が沸きました。日本選手の活躍に毎日テレビに釘付けになりながら、メダルの色を問わず拍手を送りました。また四年後のロンドンへ夢を語る若者にも感動しました。

 このすばらしいキャンパスに於いて、連帯共催の醍醐味が充分に発揮できて、意義深い討論や交流の成果がたくさん得られるようにお祈り申し上げご挨拶といたします。